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強力タントの対抗馬!? 佳作スズキ パレットの誤算と人気車への礎【偉大な生産終了車】

掲載 更新 18
強力タントの対抗馬!? 佳作スズキ パレットの誤算と人気車への礎【偉大な生産終了車】

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

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 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はスズキ パレット(2008-2013)をご紹介します。

【画像ギャラリー】本文未掲載画像多数! 意欲作パレットの写真をギャラリーで見る(15枚)

文/伊達軍曹、写真/SUZUKI

■2代目タントに対抗すべく開発された意欲作 パレット

 2代目ダイハツ タントが作った「軽スーパーハイトワゴン」という人気ジャンルに参戦すべく、スズキが2008年に送り出した刺客。

 走行性能等はさすがスズキということで好ましいものだったが、マーケティング面の失策で販売台数を伸ばすことができず、車名としては1代限りで消滅した軽自動車。

 それが、スズキ パレットです。

 スズキ パレットのボディサイズは全長3395mm×全幅1475mm×全高1735mmのホイールベース2400mmという、2代目タントと十分渡り合えるもの。

スズキ パレット。全長×全幅×全高は3995mm×1475mm×1735mm、室内長は2025mm。2007年に登場した2代目タントは3395mm×1475mm×1750mm、室内長は2160mm

 床面全体を設計し直して低床設計とし、当時の軽自動車ではトップクラスの1365mmという室内高が確保されました。

 そして助手席側にピラーレス・スライドドアを採用した2代目タントに対し、パレットは軽自動車としては初めて「両側スライドドア」を採用。

 この両側スライドドアは、グレードによっては両ドアとも電動式となるものでした。

ボンネット型軽乗用車クラスとして初となる後席両側スライドドアを採用

 搭載エンジンは最高出力54psの直3自然吸気と、同60psの直3ターボ。トランスミッションはコラムシフトの4速AT仕様で、初期モデルのカタログ燃費は18.8~20km/Lです。

 リアシートは50:50の分割可倒&リクライニング式で、リアシートは床下にスライド&格納式することで荷室とフラットなフロアを作り出すことが可能でした。

 装備面では、スズキ車で初めてキーレスプッシュスタートシステムが採用されたほか、軽最多となる10スピーカーシステムも搭載しました。

室内長2025mm、室内高1365mmを確保した内部

 また前席エアバッグや盗難防止装置の標準化など、安全&セキュリティ装備を充実させたこともパレットの特徴のひとつです。

 2009年9月には一部改良を行い、新型CVTの採用とエンジンの改良を実施。新たに搭載されたCVTは、前進2段の変速機構と従来のベルト式CVTを組み合わせた副変速機構付きCVTでした。

 そしてエンジンは、シリンダーヘッドやインテークマニホールドなどを変更したことで低速トルクが向上し、発進時の加速向上と低燃費化が実現しています。

 またこのタイミングで、専用のややワイルド系な外観デザインとブラック基調の内装を採用した「パレットSW」を追加。

パレットSW

 ファミリー層に加えて若年独身層もターゲットとしながら、スズキはパレットの拡販を目指しました。

 しかしながらパレットはダイハツ タントの後塵を拝し続け、タントに続いて登場したホンダ N-BOXにも歯が立たない状況が続いてしまいました。

 2010年8月にはマイナーチェンジを行い、その後も燃費を向上させたりアイドリングストップ機構を採用したりと頑張ったのですが、状況は好転せず。

 そのためスズキは2013年2月に登場した後継モデルに「パレット」という名前は使用せず、「スペーシア」という名前を採用。そのためパレットという車名は、わずか1代で消滅することと相成りました。

■名称は1代限りも その系譜はスペーシアへ引き継がれる

 軽自動車初の両側スライドドアを採用するなどの力作ではあり、走りの良さもそれなりに評価されていたスズキ パレットの車名が1代限りで消滅してしまった理由。

 それは、冒頭でも申し上げましたが「商品戦略(マーケティング)のミス」だったのでしょう。

 明らかに2代目ダイハツ タントをライバルと目した作りに見えたスズキ パレットでしたが、スズキは「ライバルは、特定のユーザー層に焦点を当てたタントではない。パレットのテーマはむしろ『ワゴンRとの差別化』であり、幅広い層から便利に使ってもらうことを主眼としている」という意味のことを言っていました。

 そのためパレットは「室内の広さ」についてを超積極的には訴求せず、キャビンも微妙に絞り込むことで「車らしい安定感」を重視するフォルムにもしました。

 また宣伝においても、ダイハツ タントのような「子育て世代のママさん受け」は強調せず、もっと別の側面を強調しました。

 そういった志は立派だったのかもしれませんし、前述のとおり走りもなかなか秀逸ではありました。

 しかしそういったマーケティング戦略のせいで「走りとかよくわからない。とにかく便利で広い車が必要なんです」と考える世の中の大多数にパレットはまったく刺さらず、結果としてセールスは不振をきわめたのです。

 そのためスズキは開き直り、同じ「MK」という型式名を持つ、いわば2代目のパレットである初代スペーシアには「パレット」という車名は用いず、「広大なスペース」をイメージさせるスペーシアという車名を採用。

2013年3月から発売された「スペーシア」。室内長はクラストップの2215mm(パレットは2025mm)、燃費も29.0km/Lと低燃費を実現した。初代の形式はMK32S/42S型で、パレットの「MK21S」を引き継いでいる

 そして宣伝戦略も意識的に「女性受け、ママさん受け」を狙う方向へと舵を切ったことで、初代スペーシアはまあまあのセールスを記録。

 そして2017年には、スーツケースをモチーフとした素敵なデザインの2代目スペーシアが誕生し、ホンダ N-BOXほどではないにしても、まずまずのセールスを続けています。

「パレット」というビジネスは失敗しましたが、そのエッセンスと型式名は、今日のスペーシアまで確実に受け継がれています。そのため、パレットを単なる失敗作とみなすのは間違いでしょう。

 パレットは、ターゲット想定や宣伝方法などの細かい部分の「調整」を間違えただけなのです。そして間違い(見込み違い)は、誰にだってたまにはやってしまうものです。

■スズキ パレット主要諸元
・全長×全幅×全高:3995mm×1475mm×1735mm
・ホイールベース:2400mm
・車重:910kg
・エンジン:直列3気筒DOHC、658cc
・最高出力:54ps/6500rpm
・最大トルク:6.4kgm/3500rpm
・燃費:20.0km/L(10・15モード)
・価格:136万5000円(2008年式 XS)

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みんなのコメント

18件
  • あまりパレっとしなかった。
  • 一番の敗因は後ろ姿が上に向かって絞られてるせいで、室内が狭そうに見えてしまう事
    でも副変速機付きCVTで走りが一気に向上したのは大きい
    この車からスズキは良い方向に変わったので、間違いなく偉大な生産終了車だと思う
    でも初代スペーシアはメッキギラギラのZ出すまで吹かず飛ばずだったね
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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